あのHPVワクチン騒動とはいったいなんだったのか?または、ココロはいかにしてカラダに影響を及ぼすか?

HPVワクチンと MizuhoH 氏 第5回

2013年6月にHPVワクチンの積極的摂取勧奨が差し控えられ、摂取勧奨中止が長期間に及ぶにつれ、それまで70~80%あった対象者へのHPVワクチン接種率が1%未満にまで劇的に低下しました。その原因の一つであるワクチンへの不安や不信を引き起こしたものは何だったのか?私なりに検討してみました。

厚労省によると、接種後の意識消失などの症例は今年3月までに、延べ634万人に接種されたグラクソ・スミスクライン社のサーバリックスで683例、延べ約53万人に接種されたMSD社のガーダシルで129例。うち転倒して頭を強く打ち付けたり、鼻を骨折したりするなど二次被害が起きたケースも前者で38例、後者で13例あった。

上記は 2012年06月27日の記事です。なんと、HPVワクチンが予防接種法にもとづき定期接種化された 2013年04月よりも前の出来事です。
ここで、HPVワクチンが公費助成の対象となってから、積極的接種勧奨が中止されるまでを簡単に振り返ってみます。(資料:HPVワクチンに関するこれまでの経緯及び対応(厚生労働省)① 資料1 PDF書類)
 

※ 自治体から接種対象者に接種時期を知らせたり、個別に接種を奨めるような積極的勧奨は中断されていますが、現在でも希望すれば公費助成によるHPVワクチン接種は可能です。

尚、2019年6月16日現在、HPVワクチン接種対象者に向けて、地方自治体が独自に接種時期を通知しているところもあるようです。

 

筋肉内注射に不慣れだった日本の医師

上記サイトにある定期接種でA類疾病のワクチンのうち、筋肉内注射を行うのはHPVワクチンだけで、その他のワクチンは皮下注射になっています。後述しますが、海外では、生ワクチンを除く多くのワクチンが筋肉内注射で行われているらしいのですが、これは一体どういうことなのでしょうか?
今なお残る大腿四頭筋拘縮症のトラウマ
大腿四頭筋というのは、太ももの前面にある大きな筋肉のことです。拘縮というのは筋肉が伸展性を失い関節の可動性が制限または消失した状態をいいます。コトバンクに掲載されている辞典には筋肉内注射が原因で大腿四頭筋拘縮症が発症したと 2019年06月17日現在記載されていますね。
この筋肉内注射が原因とされる大腿四頭筋拘縮症が大きな社会問題となり、日本での予防接種は一部の例外を除いて原則的に皮下接種となった経緯があるようです。
しかし、現在では筋肉内注射の物理的刺激が原因で筋肉の拘縮がおこったのではなく、組織への侵襲度の高い薬液が原因であったとされています。

筋拘縮症の要因として、薬剤のpHの低い、浸透圧の高い解熱薬や抗菌薬の頻回投与(特に両薬剤の混注)との関連を指摘しており、ワクチン(ほぼpHはほぼ中性で、浸透圧は生理的なものに近い)接種との関連には言及していない。一方、海外においては、生ワクチンを除く多くのワクチンは、原則筋肉内接種で行われている(中略)筋肉内接種が皮下接種に比べ、局所反応が少なく、また、免疫原性は同等か、それ以上であることが知られている

小児に対するワクチンの筋肉内接種法について 日本小児科学会予防接種・感染症対策委員会(PDF書類)
薬液の浸透圧が体液より高く大きな差があると、薬液と接触した体細胞から水分子が出ていってしまい、体細胞はしぼんでしまいます。
やはり、日本の小児科医は筋肉内注射の手技に慣れていないとおっしゃっていますね。
子宮頸がんワクチンの失神に関する注意喚起について
子宮頸がんワクチンの失神に関する注意喚起について (PDF書類)
引用した画像は、2011年にグラクソ・スミスクライン株式会社から出された「サーバリックス接種上の注意改訂のお知らせ」の一部です。
  1. 接種後に疼痛が高頻度で発生し、人によっては疼痛が長引くことがあることを説明する必要性。処置前にネガティブな情報を患者に伝えるとノセボ効果でかえって有害事象が発生しそうで悩ましいですが、説明されずに接種部痛が続けば誰でも不安になります。そうした不安がさらに痛みを増強する可能性については後述します。
  2. 注射部位を揉まないように医療従事者、患者ともに周知すること。
  3. 接種時の患者の肢位、ベッドに横たわった肢位での接種を勧めていること。
  4. 接種後 30分程度は医療機関内で安静にした上で異常がないことを確かめてから患者を帰宅させること。
例えば、注射部位を揉まないように医療従事者、患者ともに周知すること。等は、以下のサイトの筋肉内注射の手技解説では、注射後のマッサージだけれど、筋肉注射では基本的には実施する必要があるわ。としていますので、医療従事者の間でも混乱はなかっただろうか?と疑問に感じています。

デモンストレーション

ツイートに添付されている動画を拝見する限りでは、ワクチンを接種している術者の方の動きには無駄がなく熟練している様子がうかがわれます。注射の後には、注射部位を揉んだりすることもなく、アルコール綿を押し当てているだけなのがわかります。
また、久住先生がワクチンを打たれる時に、口を開けながら「アー、アー」と声を出していらっしゃるシーンがありますが、これは注射を打たれる警戒心から無意識に筋肉をこわばらせてしまうのを防ぐ効果があるかもしれないですね。意識的に、久住先生がそれをなさっていたのかどうかまではわかりません。
しかしながら、冒頭で紹介したとおり、HPVワクチン騒動は多数の意識消失患者を出すことから始まりました。HPVワクチンの安全性をアピールするデモンストレーションであれば、注射の際に起こる可能性のある失神への備えもアピールしなければ不完全ではないでしょうか?

迷走神経反射で意識喪失があり、外傷などの二次被害が起こるおそれを加味して、処置の際は背もたれのある椅子や横になったベッド上で行います。

デモンストレーションの為のツイートに添付されている動画や画像を拝見したところ、誰一人として背もたれのある椅子や横になったベッド上で注射を受けてはいません。背もたれのない椅子や診察用ベッドに浅く腰掛けた状態で処置を受けています。
恐らく、血管迷走神経反射が起こりそうな人には、あらかじめ別に対策をした上で注射をするのであろうと拝察いたしますが、これから注射を受ける予定の人で注射に恐怖感があったり、立ちくらみなどをよく起こすことがあるという方は、ベッドに横たわった姿勢で注射をしてもらうことが可能かどうか?前もって医療機関に相談してみた方が良いと思います。

血管迷走神経反射

神経調節性失神は、排尿、咳嗽、嚥下、食後などの特定の状況で発症する状況失神、恐怖、疼痛、驚愕など情動ストレスにより惹起される情動失神、および血管迷走神経反射による失神を総称する概念とされています(図)。

(中略)

脳幹の循環中枢に刺激が達し、遠心路として交感神経の緊張が低下し末梢血管の拡張が起こり、同時に遠心路としての迷走神経の亢進がおこり心拍数が低下します。その結果血圧低下と徐脈により脳血流は低下し失神にいたります。

自律神経は人の意識とは無関係に(不随意)に内蔵などの機能を調節していますが、交感神経と副交感神経の2つに分けられます。交感神経と副交感神経は互いに拮抗的に働き、とても大雑把な言い方をすると、交感神経は緊張した時や活動的な時に優位になり、副交感神経はリラックスした時や安静にした時に優位になります。
そして、迷走神経は、脳から出ている12対の脳神経のうち10番目に数えられる末梢神経で、副交感神経の大部分を占めています。 迷走神経[Ⅹ] – 船戸和弥のホームページ
血管迷走神経反射の機序をよく見てみると、情緒的不安定さや疼痛等の交感神経の緊張が極度に高まる状況で誘発され、結果的に交感神経の緊張が低下に転じ末梢血管の拡張が起こるのは、一見奇異に思えますが、失神して身体を横たえさせることによって、脳を心臓と同じ高さにして脳への血液供給を確保するように進化したのではないか?という仮説もあるようです。 血管迷走神経性失神:その人間特有の臨床的特徴であることに焦点を当てた仮説 ( Abstract )

血管迷走神経反射について大雑把にまとめると、恐怖や精神的緊張、疼痛等により誘発され、末梢血管の拡張と心拍数の低下によって、血圧低下と徐脈が起こり、脳への血液供給量が低下して失神に至る現象といえるでしょう。

従って、血管迷走神経反射が起こりやすい処置を行う際には、患者がリラックスした状態で行うこと、その一環として患者の肢位に気を配ることには、転倒防止以外の意義もあるのではないかと思うのです。

変化する痛みの感受性

血管迷走神経反射と並んで報告の多い副反応にHPVワクチン接種後の疼痛があります。
HPVワクチン接種後の疼痛発現から軽快・回復までの期間
サーバリックスの疼痛に関連する副反応資料(55症例) 2013年10月28日 第4回 厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会資料より(PDF書類)
 
回復までの期間がはっきりしている17症例だけでも疼痛の発現から軽快・回復まで1カ月間から1年以上にわたっています。
上記の症例が必ずしも当てはまるとは限りませんが、痛みが長引く原因として、長引く痛みそのものがさらに痛みを感じやすくさせる点と、不安などの感情が痛みを強くさせる可能性が上げられると思います。
痛みと情動

2-1 不安と痛み
痛みに対する不安があると痛みをより強く感じる。

痛みと情動 – PAIN RESEARCH Vol.25 No.4 2010(PDF書類)
 

侵害刺激が持続すると、侵害受容ニューロンの感受性が亢進して、痛覚過敏やアロディニア(通常では痛みを引き起こさない刺激によって生じる痛み)が生じる。

カッコ内はブログ管理人による
とあり、筋肉内注射後に長引いた疼痛が、痛覚過敏や疼痛閾値の低下を招いた可能性もあるのではないかと、私は疑っています。
疼痛閾値というのは、その人が痛みを感じるのに必要最低限の刺激のことです。閾値以下の刺激であれば通常は痛みを感じません。従って、疼痛閾値が低下するということは痛みを感じやすくなる。それまでは感じなかった刺激量でも痛みを感じるようになるということです。

恐ろしい病気の情報 threatening illness information や否定的な感情 negative affectivity のために、痛みの破局化を生じさせ、恐怖心 pain-related fearは維持される。

痛みの破局化思考の3要素

  • 反 芻:痛みにとらわれ、痛みが頭から離れないこと
  • 拡大視:痛みを必要以上に強い存在と感じること
  • 無力感:痛みに対して何もできないと信じ込んでしまうこと
 
さらに、マスコミ報道が不安に輪をかけたとしたら・・・

子宮頸がんワクチンを巡っては、2010年11月~今年3月に接種した推計328万人のうち、重篤な症状を含め、医療機関から報告された発熱やアナフィラキシーショックなどの副作用が1千件を超えたことがすでに判明している。

上記の記事中にある「副作用」というのは、恐らく「副反応」の事を指しているものと思われます。用語の使い方に混乱があるようですので、整理しておきます。
有害事象と副反応
子宮頸がんワクチンについて考えるp.49(PDF書類)

接種後に慢性的な痛みが生じるといった従来にない重い副作用が38例報告された。この症状とワクチンとの因果関係は分かっておらず、検討部会では情報が集まり因果関係の有無が確認されるまで、ワクチンの勧奨を一時やめるとの意見が多数を占めた。

文字装飾はブログ管理人

不安定な思春期のココロ:集団ヒステリーを事例に

 
HPVワクチンの主な副反応である血管迷走神経反射と疼痛について振り返ってみましたが、そのどちらもが心理状態と密接な関係にあることが印象的だなと思いました。

一覧として事例が出されているので上記のサイトをご紹介しましたが、上記サイトで紹介されている事例の一つ一つが実際に起こった事例なのか、また実際にあったとしても集団ヒステリーに分類することが適切な事例であったのかを検証した上でご紹介したわけではないので、あくまでも参考程度にとどめておいて下さい。
修学旅行途中の高校生に発生した集団ヒステリーの事例
修学旅行途中の高校生に発生した集団ヒステリーの事例室蘭工業大学学術資源アーカイブ
 
HPVワクチンによるとされる副反応が集団ヒステリーであるということではありません。ここで注目したいのは、集団ヒステリーの発症者のほとんどが20歳前の女性であることと、その症状とHPVワクチン副反応とされる症状の類似性です。
例えば仮説として、厚労省によってHPVワクチンの積極的接種勧奨が中止され、そのことがマスコミによって派手に報道されるなかで、ひょっとしたら自分の症状もHPVワクチンによる副反応なのではないか?という疑問を抱いた機能性身体症状を持つ人々が一定数いた可能性はないでしょうか?
子宮頸がん接種後の女児にみられる脳神経症状 信州大学脳神経内科、リウマチ・膠原病内科 池田修一先生
子宮頸がんワクチンについて考えるp.186(PDF書類)
 
子宮頸がんワクチン接種後の多様な副反応の病態と治療
子宮頸がんワクチンについて考えるp.200(PDF書類)
 

上記の記事は、現在はバズフィードに在籍している岩永記者によるものです。
この記事で明らかになったのは、不定愁訴を訴える患者の受け皿として保健医療機関はあまりにも非力であること。その為、治療を求める患者が医療難民と化してしまうこと。結果的に患者が代替療法を選択せざる得ないこと。そのような医療体制の不備がHPVワクチンへの不信感にもつながっていること。等があげられると思います。
また、起立性調節障害や複合性局所疼痛症群、または身体表現性障害をHPVワクチン接種とは関係なく既に発症していた人、あるいは、注射による疼痛をきっかけとして前記した症状等を潜在的に持っていた人が発症して、HPVワクチン接種後の副反応であると訴えている可能性をも示唆していると思います。
ところが、MizuhoH 氏によるとこの記事が、HPVワクチンの副反応が接骨院で治ったという事実を提示したことをもって心因性であると決めつけ、結果的に代替療法家を祭り上げることになったと主張していらっしゃるのですが、皆様はどのようにお感じになられるでしょうか?

因みにですが、記事中に登場する女性の母親はこのようにおしゃっていました。


記事中の女性の母親が MizuhoH 氏に宛てたツイートは 2018年6月11日ですが、上に引用した MizuhoH 氏のツイートは、2018年6月17日及び2018年12月14日になされています。
私憤を晴らすためであれば、当事者の言うことなどに耳を貸す必要はないということでしょうか?
岩永記者と MizuhoH 氏との間の確執については、下記のリンクから始まる「対岩永記者特集:対立へのターニングポイント3部作」をご覧下さい。
 

筋肉内注射に恐怖感を持つ患者の血管迷走神経反射による失神2例 Youtube より

かなり体格のよい男性が、車椅子の右の肘掛けに寄りかかるようにして座っている。左三角筋への筋肉内注射( 01:21)の直後に失神(01:43)する。
備考欄には “Big guy scared of needles.” とありますから、注射に恐怖感を持っていたのでしょう。

Guy Faints in Hospital after pain shot ( Tosh.0 ) – YouTube
失神 01:43

 
注射恐怖症の男性が左三角筋への筋肉内注射の後(1本目/01:07、2本目/01:32)、手で顔をあおいだり、シャツの胸元をあおぎ、盛んにため息をつくようになる。そして、突如失神する(02:48)。その後、ベッドに横になり3本目(04:02)の注射を右三角筋へ打つ。

Passing Out After My Injections – YouTube
失神 02:48

 

ま と め

誤解しないで頂きたいのは、これがHPVワクチン接種後副反応の正体だ、などと断じたいのではなくて、副反応とされる症状で多くみられる血管迷走神経反射や疼痛との間には、心理的な因子が無視することができない位には密接に関係しているという点を指摘しておきたかったということです。
何故なら、HPVワクチン接種後に起こったと主張されている体調不良の多くとHPVワクチンとの間に関連性がないことは、統計的な研究が示しているからです。
 

ペインクリニック外来に訪れる患者は痛みを治してほしいのではなく、痛みによる苦しみを取り除いて欲しくて来院するのだと表現した痛みの専門家がいる。

我々のように近代医学を学んだ者は、痛みの原因を検索し、その原因を取り除くことが最も重要であると考える傾向にある。

しかし、痛みの原因となる外傷や疾患は契機に過ぎず、これをきっかけとし、その患者を取り巻く社会環境が変化しその結果として痛みに苦しむ状況ができあがる場合も存在する。

痛みと情動 – PAIN RESEARCH Vol.25 No.4 2010(PDF書類)
 

血管迷走神経反射の達人現る!

どんな分野にも達人と呼ばれる方はいらっしゃるもので、血管迷走神経反射の達人もまたツイッター上におられました。

ご紹介させて頂きます。

グル・バガヴァン・マハーラーナー・シュリ・online_cheker・大先生御侍史御机下博士です。
ところで、意識を失って身体の制御が効かない状態で、どうやって受け身や防御姿勢を取れるとお考えなのでしょうか?スピードは関係ないですよね?スピードは。。。
意識がないにも関わらずぅ、意識を失っている状態でぇ、意識がないのにぃー、どうして受け身が取れるなんて思っちゃったんスかぁ???
 
偉大なグル・online_cheker博士は、MizuhoH 氏とも仲良しです。
 
 
つづく